化粧品ブランドの立ち上げを考えている個人事業主の皆さん、自分だけのオリジナル化粧品を作りたいと思っていませんか?そんな夢を叶えるのが「OEM(オーイーエム)」製造です。しかし、魅力的な製品を作るには、様々なコストがかかります。原料の選定から製造プロセス、そして魅力的な容器の選択まで、各段階でどのような費用が発生するのでしょうか?
このブログでは、化粧品OEM製造にかかる主な費用項目を詳しく解説します。
あなたの化粧品ブランドを成功させるための第一歩、それは適切なコスト管理です。一緒に、化粧品OEM製造のコストについて理解を深めていきましょう。
さきりこ
大手メーカー化粧品研究員
開発した商品でベスコス受賞経験のある化粧品のプロ
成分にもとづいた「賢いキレイ」を届けるため、本サイト「myロットコスメ」で情報発信中!
美容のキホン、おすすめ化粧品の紹介をしています。
化粧品OEMの製造コスト全体像
化粧品OEMの製造コストは、主に4つの大きな要素から構成されています。
それぞれの費用について一般的な割合を下記にまとめました。(国内工場、スキンケア製剤を想定)
化粧品OEMの製造コスト内訳例:
費用の種類 | 説明 | 全体コストに占める割合 |
---|---|---|
原料費 | 化粧品のバルク(中身)を作るための原料にかかる費用 | 20~30% |
製造・充填加工費 | 原料を釜で混ぜてバルクを作ったり、容器に詰めて仕上げる費用 | 20~30% |
包装容器代 | 容器、ラベル、化粧箱などのパッケージ資材にかかる費用 | 30~40% |
その他 | 管理費、検査費、輸送費等 | 5~10% |
これらの費用は固定ではなく、様々な要因で変動します。例えば、原料の市場価格の変化、製造ロットの大きさ、容器のデザイン変更などが影響します。
また、オリジナルボトルを使いたい場合は、金型代もかかります。
OEM会社は多数の容器ラインナップがありますが、オリジナル容器を採用したい場合には、容器を作るための型=金型が必要になります。一般的に200〜500万円程度と言われています。
金型代は非常に高額で、利益を圧迫する大きな要因です。
化粧品OEMが初めての場合や、特にこだわりが無い場合、オリジナル容器は避け、汎用ボトルを選択するのがおすすめです。
それでは、各費用について詳しく説明していきます。
原料費
原料費は化粧品OEMの製造コストの中で重要な部分を占めています。化粧品のバルク(中身)を作るために必要な全ての材料にかかる費用のことで、どのような原料を選ぶかによって金額が変わってきます。
- 使用する原料の種類と品質
- 必要な原料の量
- 原料の市場価格
- 仕入れ先との交渉力
原料の種類によって、コストは大きく変わります。
原料タイプ | コスト | 特徴 |
---|---|---|
基礎原料 | 低~中 | 水、油、乳化剤など。多くの製品に使用される |
機能性原料 | 中~高 | ビタミンC誘導体、ヒアルロン酸など。効果をアピールできる |
天然由来原料 | 中~高 | オーガニック認証原料など。環境にやさしいイメージを与える |
最新技術原料 | 高 | 特許取得の新素材など。他社との差別化が可能 |
- 使用する原料の最適化:必要以上に高価な原料を使用していないか見直す
- 配合比率の調整:効果を維持しながら、高価な原料の使用量を最適化する
- 大量仕入れによるコスト削減:ただし、使用期限や保管コストに注意
- 複数の仕入れ先との価格交渉:ただし、品質の一貫性を保つことが重要
原料費は製品の品質に直結するため、単に安い原料を選ぶだけでは不十分です。効果や安全性、そして消費者のニーズを考慮しながら、適切な原料を選択することが大切です。
製造・充填加工費
製造・充填加工費は、化粧品の原料を混ぜ合わせてバルクを作り、それを容器に詰めて製品として仕上げるまでの全ての工程にかかる費用です。この費用は、製品の品質と安全性を確保する上で非常に重要です。
- 製造ロットサイズ
- 製品の複雑さ
- 使用する機械設備
- 品質管理の厳密さ
- 製造場所(国内か海外か)
製造工程による費用の違い:
工程 | コスト | 特徴 |
---|---|---|
バルク製造 | 中~高 | 原料の混合、加熱、乳化など。製品の質を決める重要な工程 |
充填 | 中 | バルクを容器に詰める工程。容器の形状や素材により難易度が変わる |
仕上げ | 低~中 | ラベル貼り、箱詰めなど。手作業が多い場合はコストが上がる |
- ロットサイズの最適化:大量生産によるスケールメリットを活かす
- 製造工程の効率化:不必要な工程を省き、自動化できる部分は自動化する
- 適切な製造パートナーの選択:技術力と価格のバランスが取れたOEMメーカーを選ぶ
- 製造スケジュールの最適化:急ぎの製造依頼を減らし、計画的な製造を心がける
- 包装作業の簡素化:過剰な包装を避け、効率的な仕上げ工程を設計する
製造・充填仕上げ費の削減を検討する際は、製品の品質や安全性を損なわないよう注意が必要です。例えば、品質管理や衛生管理にかかる費用は、製品の信頼性を確保するために不可欠なものです。
また、製造パートナーとの良好な関係構築も重要です。長期的な取引や安定した発注量の確保により、より有利な条件で製造を依頼できる可能性があります。製造・充填仕上げ費の最適化は、単なるコスト削減ではなく、製品の品質と収益性のバランスを取る重要な取り組みなのです。
包装容器代
包装容器代は、化粧品の外観を決める重要な要素であり、製造コストの中でも大きな割合を占めています。これには、製品を入れる容器本体だけでなく、ラベル、化粧箱、内箱、外箱など、製品を包む全ての材料の費用が含まれます。
- 容器の素材(プラスチック、ガラス、金属など)
- 容器のデザインの複雑さ
- 印刷や装飾の種類と質
- 発注数量
- 容器メーカーとの交渉力
包装容器の種類による費用の違い:
種類 | コスト | 特徴 |
---|---|---|
既製品容器 | 低~中 | 汎用性が高く、初期コストが低い |
カスタム容器 | 中~高 | オリジナリティがあるが、金型代が必要 |
エコ素材容器 | 中~高 | 環境に配慮するが、コストは高めになりがち |
高級感のある容器 | 高 | ブランドイメージを高められるが、コストも高い |
- 既製品容器の活用:特に新規ブランドや小ロット生産の場合は有効
- デザインの簡素化:過剰な装飾を避け、シンプルで洗練されたデザインを目指す
- 発注ロットの最適化:大量発注によるコスト削減と在庫リスクのバランスを取る
- 複数の容器メーカーから見積もりを取る:競争原理を活用してコストを抑える
- 包装材料の統一:複数の製品ラインで同じ包装材料を使用し、発注量を増やす
包装容器代の削減を検討する際は、製品の魅力やブランドイメージを損なわないよう注意が必要です。消費者は見た目で製品を判断することも多いため、過度な切り詰めは避けるべきです。
また、近年は環境への配慮も重要です。リサイクル可能な素材の使用や、詰め替え用製品の展開など、環境負荷の低減とコスト削減を両立させる工夫も検討しましょう。
包装容器は製品の「顔」であり、ブランドの個性を表現する重要な要素です。コスト面だけでなく、製品のコンセプトや目標とする市場ポジションを考慮しながら、最適な包装容器を選択することが成功への鍵となります。
その他(管理費、検査費、輸送費等)
その他の費用には、管理費、検査費、輸送費など、製品の製造と流通に関わる様々な経費が含まれます。これらは一見すると小さな費用に見えますが、全体のコストに大きな影響を与える可能性があります。
- 管理費:製造プロセスの管理、品質管理、在庫管理などにかかる費用
- 検査費:製品の安全性と品質を確保するための各種検査にかかる費用
- 輸送費:原料の調達から完成品の配送までの物流にかかる費用
- 保管費:原料や完成品の保管にかかる費用
- 認証取得費:有機認証やその他の品質認証取得にかかる費用
- 効率的な生産計画の策定:無駄な在庫を減らし、保管費を削減
- 検査プロセスの最適化:必要な検査を適切なタイミングで実施
- 物流パートナーの選定:複数の業者から見積もりを取り、最適な選択を
- デジタル化の推進:管理業務のIT化により人件費を削減
- 認証の戦略的取得:市場ニーズに合わせた認証の選択
- コスト削減に走りすぎて品質管理が疎かにならないよう注意が必要です
- 輸送や保管の質を落とすと、製品の品質に影響を与える可能性があります
- 認証取得は初期費用がかかりますが、長期的な信頼性向上につながる場合もあります
これらの「その他の費用」は、個々の金額は小さくても積み重なると大きな影響を与えます。常に全体のバランスを見ながら、適切なコスト管理を行うことが重要です。また、これらの費用は市場環境や規制の変化によって変動する可能性があるため、定期的な見直しと調整が必要です。
製造コストを安くするコツ4選
化粧品OEMの製造コストを抑えるには、製品設計の段階から戦略的な選択が重要です。主に製剤、原料、容器の選択と、適切なロットサイズの設定がカギとなります。これらの要素を最適化することで、品質を維持しながらコストを低減することが期待できます。
ただし、過度なコスト削減は製品の魅力や安全性を損なう可能性があるため、バランスを取ることが大切です。以下、各ポイントについて詳しく見ていきましょう。
- 製剤:シンプルで製造しやすい製剤(化粧水などのサラサラで透明な剤など)を選ぶ
- 原料:汎用性が高く、コスパの良い成分を選ぶ
- 容器:既存容器を活用する
- ロット:最適なロットサイズを選ぶ
製剤の選択
化粧品OEMで製造コストを抑えるには、製剤の選択が重要です。一般的に、シンプルな製剤ほどコストを抑えやすく、複雑な製剤ほどコストが高くなる傾向があります。
- シンプルな製剤を選ぶ
- 複雑な製剤を避ける
- メイクアップ製品(ファンデーション、口紅など)
- 複合的な効果を持つ美容液
- ボディスクラブなど均一ではない製剤
- 製造工程が簡単な製剤を選ぶ
製剤タイプ別のコスト比較:
製剤タイプ | コスト | おすすめ度 |
---|---|---|
スキンケア | 低~中 | ◎ |
ヘアケア | 低~中 | ◎ |
ボディケア | 低~中 | ◎ |
メイクアップ | 中~高 | ×~△ |
最もシンプルなのは化粧水のような、「サラサラで透明な製剤」です。
- サラサラ=粘度が低く充填しやすい
- 透明=多くの場合、乳化が不要
このような剤形がもっとも低コストに製造できます。
一方、ファンデーションや口紅などのメイクアップ製品は、中身に多種類の原料が使われ、充填加工も複雑であることが多いです。
そのため、高コストになりがちです。
原料の選択
原料の選択は、製品の品質とコストに直接影響を与える重要な要素です。適切な原料選びにより、製造コストを抑えつつ、効果的な製品を作ることにつながります。
- 高価な原料の使用量を最小限に抑える
- 類似の効果を持つ、より安価な代替原料を検討する
- 複数の製品で共通の原料を使用し、発注量を増やす
- OEMメーカーの推奨する標準原料を活用する
原料タイプ別のコスト比較:
原料タイプ | コスト | 特徴 |
---|---|---|
基礎原料 | 低 | 水、油、乳化剤など。多くの製品で使用 |
一般的な機能性原料 | 中 | ヒアルロン酸、コラーゲンなど。効果をアピールしやすい |
高機能原料 | 高 | 特許取得の新素材など。差別化が可能だがコスト高 |
天然由来原料 | 中~高 | オーガニック、ナチュラル訴求が可能だがコスト高めの傾向 |
適切な原料選択により、コスト削減と製品の魅力向上の両立が可能です。市場トレンドや消費者ニーズも考慮しながら、バランスの取れた原料選びを心がけましょう。
容器の選択
容器の選択は、製品の見た目や使い勝手に直結し、ブランドイメージにも大きく影響します。同時に、製造コストの中で大きな割合を占める要素でもあります。
- 既製品(汎用)容器の活用
- シンプルなデザインの採用
- 過剰な装飾を避け、洗練された印象を与える
- 製造コストと在庫管理コストを抑えられる
- 素材の選択
- プラスチック:軽量で取り扱いやすく、コストも抑えられる
- ガラス:高級感があるが、重量とコストが高めになる
容器タイプ別のコスト比較:
容器タイプ | コスト | 特徴 |
---|---|---|
既製品容器 | 低 | 初期費用が低く、小ロットに適する |
カスタム容器 | 高 | オリジナリティがあるが、金型代が必要 |
エコ素材容器 | 中~高 | 環境訴求が可能だが、コストは高め |
高級感のある容器 | 高 | ブランド価値を高められるが、コスト高 |
- 容器の品質が内容物の品質保持に影響することを考慮する
- 使いやすさや見た目の魅力とのバランスを取る
- 輸送時の破損リスクを考慮した素材や形状を選ぶ
容器は製品の「顔」となる重要な要素です。コスト面だけでなく、製品コンセプトやターゲット市場に合わせた選択が必要です。また、環境への配慮も重要なトレンドとなっているため、リサイクル可能な素材の使用なども検討しましょう。
ロットサイズの最適化
全体の製造コストは、最終的に商品数で割り、1個あたりどのくらいの費用がかかったか?という形で扱うのが重要です。
- 1000個製造:1個あたり3000円
- 5000個製造:1個あたり600円
このように、ロットサイズによって1個あたりの製造コストが大きく変わってきます。
- 最小ロット数の確認
- スケールメリットの活用
- 可能な限り大きなロットでの発注を心がける
- ただし、過剰在庫にならないよう注意する
- 需要予測の精度向上
- 過去の販売データや市場トレンドを分析する
- 季節変動や販促計画を考慮する
ロットサイズ別のコスト比較(イメージ):
ロットサイズ | 製造コスト | 在庫リスク | 総合評価 |
---|---|---|---|
小(1,000個未満) | 高 | 低 | △ |
中(1,000~5,000個) | 中 | 中 | ○ |
大(5,000個以上) | 低 | 高 | ◎ |
※実際のコストや最適なロットサイズは、製品や企業によって異なります。
ロットサイズの最適化は、製造コストだけでなく、キャッシュフローや在庫管理にも大きく影響します。自社の経営状況や市場環境を十分に分析し、適切なロットサイズを選択することが重要です。
また、定期的に見直しを行い、変化する需要や市場状況に柔軟に対応することが、長期的なコスト最適化につながります。
まとめ
化粧品OEMの製造コストを抑えることは、ブランドの成功に不可欠です。しかし、コスト削減と製品の品質・魅力のバランスを取ることが重要です。この記事で解説した主要なポイントを以下にまとめました。
- 製剤の選択:シンプルで製造しやすい製剤を選ぶ
- 原料の選択:汎用性が高く、コストパフォーマンスの良い原料を使用
- 容器の選択:既製品容器の活用とシンプルなデザインの採用
- ロットサイズの最適化:需要予測に基づいた適切なロットサイズの設定
- その他の費用の最適化:管理費、検査費、輸送費などの効率化
これらのポイントを考慮しながら、自社のブランドコンセプトや市場ニーズに合わせた戦略を立てることが大切です。常に市場動向を注視し、定期的に製造コストを見直すことで、競争力のある製品開発が可能となるでしょう。
引き続き、化粧品開発・販売を行うみなさまのお役に立つ情報を発信していきます!