自分だけのオリジナル化粧品を作りたい!そんな夢を持っていませんか?でも、ちょっと待って!せっかく作った商品なのに、「これ、言っちゃダメなの?」と困ることがあるんです。
というのも、化粧品には「薬機法」という厳しい決まりがあるんです。知らないうちに法律違反してしまうかも…なんて、怖くなってしまいますよね。
この記事では、よくある21個の失敗例と、逆にこれなら使える例を紹介します。薬機法のワナを避けて、夢の化粧品ビジネスを始めましょう!
- 売る前ではなく作る前に薬機法を知るべき理由
- オリジナル化粧品を作る時に引っかかりがちなコンセプト21選
- NGなコンセプトへの対策
さきりこ
大手メーカー化粧品研究員
開発した商品でベスコス受賞経験のある化粧品のプロ
成分にもとづいた「賢いキレイ」を届けるため、本サイト「myロットコスメ」で情報発信中!
美容のキホン、おすすめ化粧品の紹介をしています。
せっかく作ったのに…訴求できない商品になっちゃった!?
オリジナル化粧品を作るのは楽しい!でも、完成してから「あれ?これって言っちゃダメなの?」と困ることがあります。せっかく頑張って作った商品なのに、その魅力を伝えられないのは非常にもったいないです。
例えば、アトピーに悩むお子さん用に化粧品を作ったとしても、アトピー用という訴求は薬機法上NGです。
ここでは、化粧品のアイディア段階で薬機法を知っておくべき理由を解説します。
オリジナル化粧品って何?初心者にもわかりやすく解説
そもそもオリジナル化粧品とは、自分のアイデアやコンセプトで作る化粧品のこと。大手メーカーの商品とは違う、あなただけの特別な化粧品です。
最近では、小さな企業や個人でも化粧品開発を行う事ができるんです。
OEMという方式で専門企業に製造委託を行うことで、少ない資金、小ロットで化粧品を作れます。
- 化粧品メーカーに製造を依頼
- 自分のブランド名で販売
- 最小ロットが小さいので初心者向き
専門的な化粧品知識や製造知識がなくても大丈夫。
しかし、OEMで委託出来るのは化粧品を作るところまで。商品の魅力をアピールする時には気をつけることがたくさんあります。それが次に説明する「薬機法」です。
知らないと大変なことに…薬機法違反のリスク
薬機法って聞いたことありますか?正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。長いので、略して薬機法と呼ばれています。
化粧品の製造や広告のルールを決めている法律です。
- 化粧品の定義や分類を決めている
- 化粧品の表示や広告の規制をしている
- 違反すると罰則がある(罰金や懲役も!)
製造にあたって守らなければいけないルールはOEM企業が配慮してくれます。しかし、製造した化粧品を売る時には、自分でこの薬機法の対策を取る必要があります。
- 効果をオーバーに表現する
- 医薬品のような効能をうたう
- 事実と違う内容を書く
違反するとどうなる?
- 行政指導を受ける
- 製品の回収や販売中止
- 罰金(最高1億円!)
- 懲役(最長3年)
怖いですよね。しかし、知らないからといって許されるわけではありません。次に説明する「作る前の準備」がとても大切になってきます。
「売る前」ではなく「作る前」に薬機法を知っておこう!
「薬機法?それって商品を売る時に気をつければいいんでしょ?」 そう思った人、要注意です!実は、商品を作る前から薬機法のことを知っておく必要があるんです。
- コンセプトづくりに影響する
- 「美白効果抜群!」なんて言えないから、コンセプト自体を見直す必要があるかも
- 原料選びに影響する
- 使える原料、使えない原料があるので、最初から確認が必要
- パッケージデザインに影響する
- 表示しなければいけない情報があるので、デザインの時点で考慮が必要
- 広告戦略に影響する
- SNSの投稿一つにも規制がかかるので、早めの対策が必要
薬機法を知らずに商品を作ってしまうと…
- コンセプトが大幅にずれる
- 商品特徴が大きく変更になる
- 魅力が伝わらず商品が売れない
こんな失敗を避けるために、よくある失敗例を21個紹介します。この中のコンセプト・商品特徴を考えている人は要注意!そのままオリジナル化粧品作りを進めるのは危険です。より安全に化粧品作りを進めるために、確実におさえておいて下さい。
参考:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)について」
作る前に確認必須!注意が必要なコンセプト21選
次に挙げるのは、オリジナル化粧品を作るときに設定しがちな商品コンセプトです。
これらは、おおまかに次のように分類されます。
- 一般化粧品ではNG、医薬部外品ならOK
- どちらの化粧品区分でもNG
- すぐにNGにはならないが注意が必要
一般化粧品と医薬部外品の違いについては下記記事を参考にして下さい。
- 一般化粧品ではNG、医薬部外品ならOKなコンセプト4選
- 美白
- ニキビケア
- 育毛・増毛
- ニオイケア
- どちらの化粧品区分でもNGなコンセプト12選
- 肌再生・細胞活性化
- 若返り効果
- シミ消し
- コラーゲン生成
- 肩こり・筋肉ケア・血行促進
- 肌質改善
- アレルギー防止
- アトピー用
- バリア機能を高める・新陳代謝アップ
- ホルモンバランス
- 痩せる・ダイエット効果
- ノーベル賞受賞成分
- すぐにNGにはならないが注意が必要なコンセプト5選
- シワ改善
- 美容師・医師・薬剤師が開発
- デリケートゾーンなどの粘膜使用
- リラックス・リフレッシュ・アロマテラピー
- 日本唯一・世界一の成分
一般化粧品ではNG。やるなら医薬部外品!なコンセプト4選
次の4つは一般化粧品では薬機法違反となる一方、医薬部外品なら訴求できるコンセプトです。
これらのコンセプトや効果を考えている場合は、一般化粧品ではなく、医薬部外品での製造を検討しましょう。
美白
一般化粧品でも美白成分を入れること自体は可能ですが、「美白」「ホワイトニング」という表現は医薬部外品でしか使えません。広告を作る際には次のような表現の違いが出ます。
- 一般化粧品:透明感を与える、ツヤを与える
- 医薬部外品:美白、ホワイトニングなど
表現の強さが全く違いますよね。
美白訴求ができるかどうかは、一般化粧品と医薬部外品の典型的な違いです。
美白を軸に訴求する場合は、医薬部外品として製造することで、お客さんに魅力的に伝えることが期待できます。
ニキビケア
ニキビケアも医薬部外品のみに許された訴求の典型例です。
- 一般化粧品:肌荒れを防ぐ、脂性肌用、毛穴汚れを落とす
- 医薬部外品:ニキビを防ぐ、ニキビ用、アクネケア
一般化粧品の場合、「ニキビ」というワードがそもそも使えません。せっかく商品が完成しても商品説明に記載できないので、「何をしてくれる商品かわからない」という印象を持たれてしまうことがあります。
ただし、一般化粧品でも洗顔料に該当する商品カテゴリーの場合は「洗顔によりニキビを防ぐ」という表現が可能です。
育毛・増毛・養毛
シャンプー、トリートメントなどで育毛や増毛効果をうたいたい場合があります。これも医薬部外品のみに認められた訴求です。
- 一般化粧品:頭皮ケア、頭皮をすこやかに
- 医薬部外品:育毛、発毛促進、薄毛に、脱毛の予防
具体的に「育毛」と表現できる医薬部外品に対して、一般化粧品は非常にあいまいな表現しかできません。一般化粧品にも育毛効果のある成分を入れること自体はできますが、明確な訴求ができないため「ただ頭皮のフケを抑えてくれる商品かな?」と捉えられ、ターゲットに刺さらない可能性が高いです。
ニオイケア
医薬部外品では明確に「体臭」「汗臭」が訴求できる一方、一般化粧品ではあくまで「香りによる効果」の訴求までしか認められていません。
- 一般化粧品:香りにより不快臭を抑える、芳香を与える、清浄にする
- 医薬部外品:体臭、汗臭を防ぐ、わきが、制汗
ニオイケアについては、絶対に医薬部外品の方がおすすめ、というわけではありません。
一般化粧品の場合、皮膚や頭皮を清浄にするという効果の訴求は認められています。「清潔になったら臭いもなくなるよね」というイメージから、ニオイケアを連想してもらいやすい特徴があります。言い方を工夫することで魅力を伝えられる可能性があります。
ただし、やはり「体臭」など具体的な表現は使えないため、強い商品コンセプトにしたい場合は医薬部外品をおすすめします。
どちらの化粧品区分でもNGなコンセプト12選
次に解説するのは、一般化粧品、医薬部外品どちらでもNGなコンセプトです。
これらのコンセプトは、そのままの表現では商品説明や広告に使えません。開発者であるあなたの中で、「真のコンセプト」として持っておくのはもちろん良いですが、販売時は別の表現に置き換えて売っていくことになります。
やりがちな失敗例なので注意してご覧ください。
肌再生・細胞活性化
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している 生きた細胞への効果はNG |
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言い換え表現例 | 肌を整える、肌をすこやかにする |
化粧品の基本的な考え方として、「生きた細胞への効果はNG」というものがあります。化粧品の効果を訴求できるのは、角層(かくそう)と呼ばれる肌の一番表面にあるわずか0.2mmほどの部分までなのです。角層は「死んだ細胞」と呼ばれ、血管も通っていなければ、細胞分裂などで成長もしない部分なのです。
一方、「肌再生」「細胞活性化」などは肌の生きた細胞へはたらきかけるコンセプトなので、そのままではNGとなってしまいます。
「肌を整える」などの表現に言い換えることで、訴求自体は可能ですが、もともとのコンセプトよりは弱くなることを念頭においておく必要があります。
若返り効果
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 若々しい印象に、年齢肌の乾燥を防ぐ、ハリを与える |
化粧品の広告においては、「この範囲でしか効果をうたってはいけません」というルールが決められています。「若返り」はその範囲に含まれないためNGとなります。
化粧品を使った結果、肌がうるおって若々しい印象に、という内容であれば表現可能です。ただし、年齢を重ねた肌が若々しくよみがえる、というニュアンスなどは伝えられないため注意しましょう。
シミ消し
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | なめらかでツヤのある肌に |
シミは多くの女性にとって悩みのタネになりやすいため、お金を払ってでも解消したいと思っている人が多くいます。つまり、ビジネス的にはチャンス。しかし、残念ながら「すでにできてしまったシミを解消する効果」は化粧品では訴求できません。「防ぐ」までが限界です。
「医薬部外品なら美白表現できるよね?」と思われるかも知れませんが、訴求できるのはあくまで「これ以上黒くならないようにする」という意味までです。医薬部外品にしてもできてしまったシミを消す、肌そのものを白くする、という効果は訴求できないのです。
医薬部外品でも、「メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ」という表現にとどめる必要があります。
ただし、ファンデーションなどのメイクアップ製品であれば、物理的にシミをカバーすることによる「シミケア」は認められています。
コラーゲン生成
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している 生きた細胞への効果はNG |
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言い換え表現例 | ハリ・ツヤのある肌に |
コラーゲンは肌の弾力を作って若々しさを保つとても重要な成分です。しかし、年齢とともに身体で作られる量が減り、それが老け見えの一因になります。
そんなコラーゲンの生成を促進できれば、肌そのものが若返りそうでとても魅力的なコンセプトになりますが、広告に記載することはできません。
「ハリ・ツヤのある肌に」など、間接的な表現は可能ですが、他社も良く使っている表現なので差別化が難しいのが実際のところです。
化粧品原料メーカーの説明資料では、コラーゲン生成の効果が説明されているものもあります。実際にコラーゲン生成効果があるとされる成分も多く存在しますが、いざ販売する際には訴求できないため注意が必要です。
肩こり・筋肉ケア・血行促進
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している 生きた細胞への効果はNG |
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言い換え表現例 | マッサージによる血行促進 |
これもありがちなコンセプト例です。イメージ的にはメントールのようなスッキリとした清涼感があって、塗ると肩こりや筋肉の痛みが和らぐ、という商品です。
化粧品に認められた効果の範囲を逸脱しており、さらに生きた細胞である筋肉への作用も含んでいるためNGとなります。これも、実際に効果のある成分は報告されていますが、訴求することができません。
もしこのコンセプトで進める場合には、「マッサージ効果との組み合わせ」をおすすめしています。
マッサージによる物理的な効果で血行促進される、という表現は認められているんです。
また、こういった製品はスーッとした清涼感や、逆に温感を与える場合があります。マッサージ効果+使用感を組み合わせて効果を伝える形になります。
肌質改善
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 肌を整える、肌をすこやかに保つ、肌荒れを防ぐ |
一時的なケアではなく、肌そのものを改善できるのは魅力的なコンセプトです。しかし、残念ながら肌質改善もNGなコンセプトです。
「肌荒れを防ぐ」などで類似のニュアンスを伝える事はできますが、肌質改善ほどの強いコンセプトは伝えられないことを念頭においておく必要があります。
アレルギー防止
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 肌を整える、肌をすこやかに保つ、肌荒れを防ぐ |
医薬品・薬の範囲にあたるコンセプトです。化粧品では認められた効果の範囲を逸脱しているため、アレルギーそのものの防止は訴求できません。
先程の肌質改善と同様、肌そのものや身体そのものの機能には影響を与えられない、ということを覚えておくと良いでしょう。
「アレルギー」という言葉を商品説明のどこかに書いた時点でNGと判断される場合があるため注意が必要です。
アトピー用
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 肌を保護する、肌をすこやかに保つ、肌荒れを防ぐ |
ご自身や家族がアトピーで悩んでおり、安心して使える化粧品を作りたい!という想いでOEM開発を行う方がいらっしゃいます。
しかし、残念ながらアトピーへの効果は訴求NGです。「アトピー」という言葉を書いた時点でNGと判断される可能性が高いです。
「肌をすこやかに保つ」などでニュアンスを伝える事はできますが、明確に「アトピー用」などと表現はできないことに注意して下さい。
バリア機能を高める・新陳代謝アップ
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 肌を整える、肌をすこやかに保つ |
これも非常に多いコンセプトです。
バリア機能とは肌に備わったもので、外部からの刺激や雑菌を防ぎ、内部のうるおいを保つ機能です。バリア機能を高めることで肌をすこやかに保ち、いろいろな刺激から守る事ができます。
バリア機能は、肌の一番表面である角層により発揮されています。角層までなら訴求OKなのですが、機能そのものに影響を与えるコンセプトはNGです。新陳代謝アップも同様です。
「バリア機能」「新陳代謝」という言葉自体は、広告中で使ったからといって、すぐにNGになるわけではありません。
しかし、「この化粧品はバリア機能に効果があります!」と明確に表現することは不可なので、バリア機能を軸にした化粧品は工夫が必要であることを念頭においておきましょう。
ホルモンバランス調整
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 女性らしいうるおいやハリ・ツヤを与える、肌を柔らかくする |
最近の化粧品市場はフェムテックが勢いを増しています。
フェムテックとは、女性特有の健康や美容の問題をケアする技術のことです。
この流れに乗って「女性ホルモンを整える」などのコンセプトを考えがちですが、実際には訴求できないので注意が必要です。
フェムテック系のコンセプトについては、「女性らしいうるおい・ハリ」などと表現することでニュアンスを伝えることは可能です。ただ、ホルモンバランスや生理への影響などは訴求できないので商品開発の際に注意が必要です。
痩せる・ダイエット効果
NG理由 | 認められた効果の範囲を逸脱している |
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言い換え表現例 | 肌を引き締める、マッサージによるむくみ取り、温感 |
エステサロン発の化粧品でよくあるコンセプトです。
「このボディクリームでマッサージすることで脂肪燃焼してスリムな身体に」といった内容が多いです。
このようなダイエット効果そのものはうたうことができません。
もし訴求する場合は、「肌を引き締める」という表現は可能です。本来の意味は、肌表面を引き締める、という内容なのですが、ライティング技術により記載箇所や表現方法を工夫することでニュアンスを伝える事はできます。
また、意外に感じるかも知れませんがマッサージと組み合わせることによる「むくみ取り」は訴求することができます。むくみ取りはエステのダイエット効果の一つとしてお客さんがイメージしやすいため、積極的に訴求することをおすすめします。
また、カプサイシンなどの温感成分を含む場合は、温感効果と合わせて訴求することでより魅力的に表現することができます。
ノーベル賞受賞成分
NG理由 | 効能効果を保証する表現にあたるため |
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言い換え表現例 | 先端科学の研究成果を活用 |
抗酸化作用のあるフラーレンなどでよくある表現です。
ノーベル賞受賞、と表現することで、「そのくらい効果が保証されている成分です」と言っているのと同様とみなされ、NGとされる可能性が高いです。事実としてノーベル賞を受賞した成分であっても訴求はできません。
表現するのであれば、「先端科学の研究成果」など、具体的な受賞内容は伏せる形が挙げられます。
他社製品と混ぜて使う
NG理由 | 他社製品と自社製品の混合は、安全性、有効性、品質管理面での問題が生じる可能性があるため |
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言い換え表現例 | 女性らしいうるおいやハリ・ツヤを与える、肌を柔らかくする |
たまにあるコンセプトなのですが、「お手持ちの化粧品に混ぜて使う」というもの。新しいコンセプトのように聞こえ、魅力的に感じるのですが、これは薬機法的にNGです。
自社が把握・管理できていない化粧品と自社製品を混ぜる事により、安全面などで問題が起こる可能性があるためです。
これは使用方法なので代替表現でどうにかなるものではありません。根本的なコンセプト見直しが必要です。
だからやはり、商品設計段階で薬機法を知っておく必要があるのです。
なお、自社商品どうしの混合はOKです。
どうしても混合することを前面に出して訴求したい場合、自社製品を2つ以上開発して、自社製品どうしの混合を訴求する内容にすることをおすすめします。
すぐにNGにはならないが注意が必要なコンセプト5選
最後のセクションとして、絶対NGではないが、慎重に戦略を練る必要があるコンセプトを5つ紹介します。
うっかり何も考えずにこれらのコンセプトで進めると、後で困ったことになってしまうので、要チェックです。
シワ改善
シワ改善はとても強力な訴求です。ただし、一般化粧品と医薬部外品とで訴求の強さに大きな違いがあります。
- 一般化粧品:乾燥による小じわを目立たなくする
- 医薬部外品:シワ改善
一般化粧品だと「シワ改善」は伝えられず、あくまで「小じわを目立たなくする」という表現までとなります。お客さんの一番の悩みである「加齢によるシワ」にはアプローチできない事になっています。
- ガイドラインに沿った試験実施が必要
- 「乾燥による小じわを目立たなくする」の縛り表現
- 「(※)効能評価試験済み」の表記が必要
表現にあたっては、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験を行う必要があります。
参考:日本香粧品学会「化粧品機能評価法ガイドライン」
一方、医薬部外品だと明確にシワ改善と訴求できます。
ただし、次の条件があります。
- 厚生労働省に認可された有効成分(レチノール、ナイアシンアミド、ニールワン)が指定量含まれること
- 訴求表現は承認された範囲内に限る
キーになるのが、有効成分です。2024年8月現在、厚生労働省にシワ改善効果が認められているのは次の3成分のみ。
- レチノール
- ナイアシンアミド
- ニールワン
ただし、ニールワンはポーラの独自成分なので化粧品OEMでの使用はできません。
成分 | 使用可否 | 説明 |
---|---|---|
レチノール | 条件付きOK | ビタミンAの一種。シワ改善効果が認められている。資生堂が特許を取得しており、特定の製剤や使用方法に限定される可能性が高い。特許の詳細確認が必要。 |
ナイアシンアミド | 条件付きOK | ビタミンB3の一種。シワ改善効果と美白効果が認められている。一般的な成分で、多くの企業が使用可能。特定の企業による独占的な特許はないが、成分の組み合わせによっては注意が必要 |
ニールワン | NG | ポーラが開発した独自成分。日本で最初にシワ改善効果が認められた。ポーラが特許を保有しており、他社での使用は基本的に不可能。 |
もしシワ改善を訴求する医薬部外品を作るなら、レチノールかナイアシンアミドを配合するのが手になります。
他の成分との組み合わせによっては、他社が特許でおさえている可能性がありますので、OEM先に相談しましょう。
美容師・医師・薬剤師が開発
美容師や、医療関係者である医師、薬剤師、歯科医師や、などによる「開発」訴求はグレーな領域です。
- 「開発」:グレー
- 「指定」「公認」「推薦・おすすめ」「指導」「選用」「愛用」:NG
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局その他化粧品等の効能効果に関し、世人の認 識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、 又は選用している等の広告を行ってはならない。
参考:日本化粧品工業連合会 化粧品等の適正広告ガイドライン
禁止されている理由は、医師や薬剤師、美容師などの国家資格を持つ人の影響力が大きく、一般のお客さんがそれだけで信じてしまいやすいためです。
「〇〇医師のおすすめ!」と書いてあったら信頼しやすいですよね。
一方、「おすすめ」ではなく、「開発」の場合はグレーです。
通達『医薬品等広告に係る適正な監視指導について(Q&A)』(事務連絡平成30年8月8日)によると、「大学との共同研究」はNGとされています。医師等による共同研究・共同開発も同様にNGとなると判断される可能性もあります。
ただ、いわゆる「ドクターズコスメ」として販売されている化粧品も多数あります。ガイドラインや通達に基づくとNGと判断される可能性が高いですが、もともと医師等による推薦の禁止は薬機法で直接禁止されているものではありません。
美容師、医師、薬剤師等が開発、というコンセプトを採用する場合は、リスクを承知の上でコンテンツを作成する必要があります。
なお、医師等が化粧品を開発すること自体は何ら問題がありません。ただ、広告にそれを記載することがグレーであり、リスクがあるということです。
デリケートゾーンなどの粘膜へ使う
フェムケア製品でよくあるのが、膣などの粘膜使用をコンセプトとしたものです。
粘膜に化粧品を使用すること自体が規制されているわけではありません。アイライナーなど粘膜使用を想定している化粧品もあります。
ただ、以下に注意が必要です。
- 成分によっては粘膜使用が禁止されている
- 安全性面の確認が必要
膣は経皮吸収性が高い部位としても知られています。成分や製品によっては粘膜使用が禁止されている場合があります。
肌用の化粧品として製造したものを、膣などのデリケートゾーン用としてそのまま販売するのは大きなリスクを伴うため絶対にやめましょう。
デリケートゾーン用製品を開発したい場合は、あらかじめOEM先と相談する必要があります。
リラックス・リフレッシュ・アロマテラピー
エステサロンやリラクゼーションサロン発の化粧品を作る場合に多いコンセプトです。
「こだわりの天然香料をブレンドしたアロマテラピー効果」のような訴求です。
リラックスやリフレッシュは、心身を改善させることを指すため、化粧品の効能効果として訴求することはできません。
また、アロマテラピー・アロマセラピーは、医療行為との誤認の可能性があるため訴求が禁止されています。
ただし、これらには抜け道があります。
あくまで「良い香りである」という表現に留める方法です。
- NG表現:シトラスの香りでリラックスできます
- OK表現:リラックスできるシトラスの香り
「何が違うの?」と思われるかも知れません。
NG表現は、化粧品に含まれるシトラス成分の効果によりリラックスさせる、というニュアンスに受け取られます。この場合、化粧品の効能効果としてリラックスを表現している事になり、NGとなってしまいます。リラックス効果は化粧品に認められた効能効果の範囲外だからです。
一方、OK表現では「リラックスできる香り」と、あくまで香りにフォーカスされています。この場合、化粧品の使用感としての表現に捉えられるため、OKとなります。
お客さんとしてはどちらも変わらないように受け取られると思われますが、広告審査的には上記の切り分けがあります。
リラックス系のコンセプトで製品開発する際は、開発にあたって気をつけるべきことは特にありませんが、訴求時の微妙な表現に注意しましょう。
日本唯一・世界一の成分
化粧品成分には、日本初・日本唯一のものや、世界で一番〇〇に対する効果があるという性能のものがあります。いわゆる「No.1訴求」というものです。
これらの表現は、合理的な根拠を示せなければ景表法違反となります。
- 客観的な調査データ、科学的な根拠等の資料が求められる。
ただ、実際には合理的な根拠を示すのは難しいです。また、最近特に広告規制が厳しく、摘発が増えている訴求内容です。
そのため、「日本一!」などを訴求軸にした商品開発は避けるべきです。
- 独自成分配合
- 先端美容成分
上記のような表現をすることで、独自性を伝えることはできます。
根拠のない・薄い「No.1訴求」には気をつけましょう。
まとめ
この記事では、オリジナル化粧品を作る際によくある薬機法違反のリスクについて解説しました。以下に主な内容をまとめます:
- 一般化粧品ではNG、医薬部外品ならOKなコンセプト4選
- 美白
- ニキビケア
- 育毛・増毛
- ニオイケア
- どちらの化粧品区分でもNGなコンセプト12選
- 肌再生・細胞活性化
- 若返り効果
- シミ消し
- コラーゲン生成
- 肩こり・筋肉ケア・血行促進
- 肌質改善
- アレルギー防止
- アトピー用
- バリア機能を高める・新陳代謝アップ
- ホルモンバランス
- 痩せる・ダイエット効果
- ノーベル賞受賞成分
- すぐにNGにはならないが注意が必要なコンセプト5選
- シワ改善
- 美容師・医師・薬剤師が開発
- デリケートゾーンなどの粘膜使用
- リラックス・リフレッシュ・アロマテラピー
- 日本唯一・世界一の成分
薬機法や景表法など化粧品に関わるルールを知らないままに開発を進めると、そもそものコンセプトが表現できなかったり、軸がぶれてしまったりと、せっかくの労力が水の泡になってしまいます。
失敗を避けるために、売る前だけでなく作る前から陥りがちなワナを知っておくことで、方向性を間違わずに進めることができます。
引き続き、化粧品OEM開発を行うみなさまのお役に立つ情報を発信していきます!