オリジナルの化粧品を作りたい!
今、そんな思いを持った方が化粧品OEM開発をする例が増えています。
化粧品OEM開発は、自分のブランドを立ち上げる夢を実現する素晴らしい方法ですが、何から始めればいいのかわからないことも多いでしょう。この記事では、次のことを解説します。
- 市場ニーズの調査方法
- 競合の調査方法
- 魅力的なコンセプトを作る方法
化粧品OEM開発のプロセスを初めての人でも理解しやすいように具体的なステップを解説します。
これから化粧品OEM開発を行う人はぜひ参考にして下さい!
さきりこ
大手メーカー化粧品研究員
開発した商品でベスコス受賞経験のある化粧品のプロ
成分にもとづいた「賢いキレイ」を届けるため、本サイト「myロットコスメ」で情報発信中!
美容のキホン、おすすめ化粧品の紹介をしています。
化粧品の方向性設定
化粧品のOEM開発において最も重要なステップは、売れる製品を創造する強力なアイディアから始まります。ここでは、そのアイディアを形にするための初期段階について詳しく見ていきます。
市場ニーズを調べる
化粧品OEM開発を成功させるには、市場ニーズを理解することが不可欠です。市場調査を行う際には、次の流れで行いましょう。
- 競合調査:同じ市場で活動する他のブランドや製品の成功事例と失敗事例を研究します。
- トレンド分析:ソーシャルメディア、業界レポート、消費者調査などを利用して、最新の美容トレンドや消費者の嗜好の変化をキャッチします。
これらの情報を基に、市場が求める製品の特性や機能を理解し、それを製品開発に活かします。
競合調査
競合調査は、他の企業がどのような製品を提供しているのか、また市場でどのように受け入れられているのかを調べることです。この調査を行うことで、これから作る製品の勝ち目を理解し、改善点・注意点を見つけることができます。以下に具体的なステップを説明します。
競合企業を調べる
まずは自分たちの製品と似たものを販売している他の企業をリストアップします。
- 楽天
- Amazon
- Qoo10
など代表的な物販プラットフォームで、例えば「エイジングケア 化粧水」などと検索してみるのが良いでうしょう。
市場では今どのような企業の商品が人気なのか?どんな企業が参入しているのか?が把握できます。
または、ドラッグストアや百貨店などの店舗に行き、直接製品を見るという方法もあります。
地道な方法ですが、位置取りやディスプレイなども含めて観察できるため、得られる情報は多いです。
競合製品を調べる
次に、競合する製品が何を売りにしているか(価格、品質、デザイン、機能など)を詳細に調べます。例えば、機能で言うと、
- 天然成分100%で敏感肌も使える
- ヒト幹細胞培養液配合で根本から美肌へ
- リポソーム配合で効果的にエイジングケア
- できてしまったシワ改善
などです。
このようなウリをもった製品が市場に出ていて、そこそこ売れているということは、確実にニーズがあるということの確認になります。
自分たちの製品が目指すべき方向性として、参考にします。
顧客の口コミ調査
次に、競合製品に対する顧客の反応を調べます。
レビューサイトや口コミサイトの意見はとてもリアルなため、本当に喜ばれているポイントや、お客さんはどのような性能に注目しているか、などの目星をつけることができます。
- 楽天の口コミ
- Amazonの口コミ
- Qoo10の口コミ
例えば、エイジングケア化粧品は高い効果を感じられるものが受けている、ベタつきがないものが求められている、香りはシンプル・ナチュラルなものがいい、余計な物が入っていない無添加な点がいい、などです。
顧客がどのような点に満足または不満を感じているか、何を重視して、何を重視しないかを把握して製品開発の参考にします。
トレンド分析
トレンド分析は、流行りのものを追跡し、消費者の関心が何に向かっているかを把握するための重要な手法です。特に化粧品業界のように流行が速く変わる分野では、常に最新のトレンドを知っておくことが成功の鍵となります。
SNSを使ったトレンド分析
SNSは、若者からエイジングケア世代まで、今なにが流行っているのかを知るのに最適な場所です。InstagramやTikTok、Twitterなどで、特定のハッシュタグがどれだけ使われているかを追跡します。例えば、ある化粧品が「#夏のメイクトレンド」や「#エコフレンドリー美容」といったハッシュタグと共にたくさん投稿されている場合、それらは今注目されているトレンドかもしれません。
上位に表示されている投稿や、ハッシュタグをリストアップしましょう。
業界レポートを利用したトレンド分析
業界レポートは、専門家が市場データや消費者の行動を分析して作成した文書です。これらのレポートには、どの年齢層がどのタイプの製品を好んで購入しているか、また市場で新しく出てきたブランドや製品がどのような影響を与えているかなどの情報が含まれています。これらの情報を利用することで、自分たちの製品開発に生かすことができます。
仮コンセプトの設定
ここまでざっくりと市場の状況や競合について調べました。
なんとなく、「今はこんな化粧品が流行っているのかな」「こんな化粧品を作ったら売れそうだな」、という目星がついていると思います。
そこで次は仮コンセプトと仮ターゲットを設定します。
なぜ「仮」かというと、この段階ではまだ情報不足だからです。
ざっくりと市場調査はしましたが、多くの場合、市場調査の情報だけで確固たるコンセプトやターゲットを設定するのは難しいです。
一方、何も設定しなければ方向性が定まらず、開発が進みません。
そこで、この段階では仮コンセプト・仮ターゲットを想定しておき、後のアンケートやインタビュー、追加調査などを経て柔軟に変化・進化させていきます。
仮コンセプトとは?
そもそも仮コンセプトとは、製品の基本的なアイデアやビジョンのことです。このコンセプトは製品の設計、マーケティング戦略、顧客とのコミュニケーションの基盤となります。
例えば次のようなものを設定します。
薬機法/景表法はいったん無視で大丈夫です。
- 全体コンセプト:
この化粧水は、年齢を重ねた肌に特化した高機能エイジングケア製品です。主要成分には、科学的に証明された抗老化効果のある成分を配合し、肌の弾力とハリを取り戻すことに焦点を当てています。 - 主成分:
- ペプチド複合体:コラーゲンの生成を助け、肌の深層に働きかけることでシワを目立たなくします。
- セラミド:肌の水分保持能力を高め、乾燥による小じわを防ぎます。
- 抗酸化成分(ビタミンC、E):自由基から肌を守り、明るく健康的な肌へと導きます。
- 製品特徴:
- 高い浸透力:ナノテクノロジーを用いて成分を微細化し、肌に素早く浸透させることで即効性を実現します。
- 持続的な保湿:長時間肌の水分を保ち続けるフォーミュラを採用して、朝から晩まで潤いをキープします。
- 環境に優しいパッケージ:リサイクル可能な材料を使用したエコフレンドリーなパッケージで、サステナビリティにも配慮。
- ターゲット顧客:
- 40歳以上の女性で、肌の老化が気になり始めた人々。
- 肌のハリや弾力に関心が高く、積極的にスキンケア投資を行う意欲がある。
- エコフレンドリーな製品を好む環境意識の高い消費者。
仮コンセプト設定時に意識すること
仮コンセプトを考えるときは次のことを意識しましょう。
- 収集したデータを活用する
- 差別化ポイントを明確にする
- 自分の情熱と目標を反映させる
事前に行なった市場調査のデータを活用するようにしましょう。そうすることで検討違いな方向性を設定してしまうことを避けられます。
また、競合他社とどのように違うか、どんなユニークな価値を提供できるかを明確にします。これがないと、後々の広告作成などで強い訴求をするのが難しくなります。
データだけではなく、あなたが化粧品に込めたい思いや、達成したい目標を盛り込むことも大切です。例えば、環境に優しい製品を作りたい、特定の肌悩みを解決したいなど、個人の情熱が製品に独自性をもたらし、市場での差別化を図ることができます。
仮コンセプトの作り方
では、仮コンセプトを作る具体的なステップを解説します。
全体コンセプトの考え方
全体コンセプトの考案には、市場調査と自分が作りたいイメージを反映させることが必要です。
- 消費者にはどんな悩みがあるか
- 最近はどんな化粧品が流行っているか
- 今ある製品で満たせていないのはどんなところか
- どんな人に届けたいか
- 商品を使ってどうなってほしいか
- 他の商品では実現できないのはどんなところか
例えば、市場調査の結果から、年齢を重ねた方がさまざまな肌悩みを持っていること、また、消費者は高機能な化粧品を求めていることがわかったとします。
そして、自分の思いとして、年齢を重ねてもずっと自信を持って過ごしてほしい、身近な人がシミやシワに悩んでいた、などを考慮します。
これらから、
「年齢を重ねた肌に特化した高機能エイジングケア製品」というおおまかなコンセプトが考えられます。
主成分の選定
主成分の選定は、OEM会社がサポートしてくれます。
なのでここでは、こだわりの成分や、求める機能を考えておきます。
例えばエイジングケア化粧水の例でいくと、コラーゲンの生成を助けるペプチドや、保湿に優れたヒアルロン酸、皮膚のバリア機能を支えるセラミドなどが考えられます。
「どの成分がどんな効果があるのかわからない」
という場合は、次の記事を参考にして下さい。
また、特にこれといった成分の希望がなければ、「保湿」「浸透」など機能だけを決めておけばOKです。
製品特徴の設定
次の製品特徴を決めておくと良いでしょう。
- 機能・効能効果:
保湿、エイジングケアなど - 使用感:
テクスチャー、浸透感、さっぱり、しっとりなど - SDGs観点:
再利用可能なパッケージ、アップサイクル原料 - 価格:
低価格帯、中価格帯、高価格帯 - デザイン:
ボトル形状、ラベルなど - 容量:
製品のサイズや量
OEM会社との打ち合わせで変更になる可能性もあるので、仮で決めておくイメージです。
ターゲット設定
全体コンセプトでも設定したターゲットについて、もう少し詳しく設定します。
同じ40代女性でも、
- 自然やキャンプが好き。無印良品などなるべくナチュラルなものを選ぶようにしている。
- 肌悩みは、シミ、くすみなどの肌色についてが一番気になっている。
- 華やかで高級なものが好き。百貨店のハイブランドな商品を選ぶことが楽しみ。
- 肌悩みは、たるみ、シワなど肌形状についてが一番気になっている
このように、詳細を考えるとかなり違いがあります。
よくやりがちなのが、ターゲットを広くとりすぎること。
商品の売上を伸ばすべく、より広い顧客層をターゲットに設定するというものです。
大企業であればこのやり方でも問題ないのですが、今から小ロットで化粧品を売る個人の方や企業にとっては、経験上、もう少し絞った方が成功しやすいです。
どんなターゲットに届けたいかはっきりさせることで、よりシャープな商品設計につながります。
シャープな商品設計をすることで、ターゲットに深く刺さり、リピートや長く愛用してもらえることが期待できます。
インタビューで仮コンセプトを磨く
ここまでで設定したコンセプトについて、
- ちぐはぐな部分がないか?
- そもそも方向性があっているか?
- 仮ターゲットに刺さる内容になっているか?
などを確認して、コンセプトに磨きをかけていきます。
その方法の一つがインタビューです。
インタビューは、直接的な顧客の意見や感想を収集するための重要なツールです。これを通じて、製品に対する満足度、改善点、顧客のニーズや期待を把握することができます。ここでは、顧客アンケートとインタビューの実施方法について解説します。
なお、通常、インタビューには費用がかかります。
企業の新規事業として化粧品OEM開発をする場合など予算が取れる場合は、調査会社に設計を含めてお願いするのが良いですが、個人で行う場合、ひとまずは身近な人へのインタビューで十分です。
インタビューは次の流れで行います。
インタビューの設計
まずはアンケートを行う目的を具体的に決めます。例えば、新しい製品の受け入れ度を測る、どのようなテクスチャーや香りが好まれるのか調べる、などです。
また、この時点で具体的なターゲットは決まっていないかもしれません。その場合は、いくつかの仮想ターゲットを設定すると良いでしょう。
例えば、エイジングケア化粧水の例で言うと、
- 20代で早めから老化防止したい人
- 30代でエイジングの兆候が出てきた人
- 40代でいろいろな肌悩みが出てきた人
などです。
それぞれの年代や特性に合わせて身近な人をリクルートしましょう。自分の知り合いにいない場合は、紹介してもらうのも手です。
質問項目を設定する
調査の目的が叶えられるよう、質問する内容を考えます。
例えば次のような項目が挙げられます。
- 現在使用している化粧品にどのような満足をしていますか?
- 現在の製品で改善して欲しい点はありますか?
- 新しい化粧品を試す際に最も重要視する要素は何ですか?(例:価格、成分、ブランドイメージ等)
- 化粧品選びにおいて、どのような情報源を最も信頼しますか?(例:ソーシャルメディア、友人・家族の推薦、専門家のレビュー等)
- どの種類の化粧品に最も興味がありますか?(例:スキンケア、メイクアップ、ヘアケア等)
- 特定の成分や特性を求めていますか?(例:オーガニック、無添加、アンチエイジング等)
- 製品の使用感にどのような期待を持っていますか?(例:軽いテクスチャー、長持ちする効果、即効性等)
- パッケージデザインに求める要素は何ですか?
- 化粧品を購入する際、どのような販売チャネルを利用しますか?(例:オンライン、実店舗、直販等)
- 購入決定に最も影響を与えるのは何ですか?(例:価格、レビュー、ブランドの信頼性等)
- 定期的に同じブランドの製品をリピート購入しますか?その理由は何ですか?
- お気に入りの化粧品ブランドはありますか?その理由は何ですか?
- 新しいブランドの製品を試す際、どのような情報が信頼に繋がりますか?
- ブランドからの情報で重要視する点は何ですか?(例:成分の透明性、企業の倫理観等)
- 最近興味を持っている美容・化粧品のトレンドは何ですか?
- 今後試してみたい新しい製品の種類はありますか?
これらの質問は、ターゲット顧客のニーズや好みを深く理解し、製品開発の方向性を定めるのに役立ちます。インタビューを通じて得られる洞察は、製品設計やマーケティング戦略の基盤となる重要な情報源です。
インタビューを行う
先ほど設定した目的や質問項目をもとに、インタビューで尋ねる質問のリストを手元においておきます。流れに自然な会話ができるよう、柔軟に質問を追加したり変更したりできるように準備します。
直接会う形式か、オンライン形式かなど、対象者と相談して決めて下さい。
リラックスした環境を作り、率直な意見が得られるよう努めましょう。
インタビュー中は、対象者に許可を得て録音や撮影をさせてもらうと後で見返せて安心です。
インタビューを分析する
インタビューから得られた情報を整理します。
インタビューでは、意外とあちこちに話が飛びがちです。
対象者が語っていたコメント一つ一つについて、どのような意味があるのか考え、割り振っていきます。
例えば、「(化粧水について)乾いた後ベタベタするとファンデーションが乗りづらくなるからイヤ」などの話は、テクスチャー開発に活用、などです。
アンケート結果から、次のようなことが決められるようにまとめていきます。
- どんな機能があれば喜ばれるか
- 入っていると嬉しい成分はあるか
- 入れてほしくない成分はあるか
- テクスチャー・香りはどんなものを目指すべきか
- 他に注意すべき点はないか
コンセプトに反映させる
インタビューの結果をコンセプトに反映させます。
以下のポイントに注意してデータを利用すると効果的です。
- 顧客が現在使っている製品に対して感じている不満
- 顧客が新製品に求める機能や特性
- 顧客の不満を解消する機能や特性を製品コンセプトに明確に盛り込む
- 特定の機能(例えば、長持ちする保湿効果、速攻性のあるエイジングケア等)をコンセプトの中心に据える
- 顧客のライフスタイルや日常の習慣
- 顧客の価値観やエシカルな考え方(例えば、環境に優しい製品を好む等)
- ライフスタイルに合わせた使用方法やパッケージデザインを提案
- 顧客の価値観を反映した製品開発(エコフレンドリーな材料の使用、クルエルティフリーの製造プロセス等)
- 顧客が製品選びにおいて重視するブランドイメージや信頼性
- 製品のブランドポジショニングを明確にし、信頼できる品質や独自のブランドストーリーを強調
- ブランドが持つ独特な価値を生かしたコンセプトの形成
- 競合製品との比較で顧客が感じた強みと弱み
- 競合製品にはない独自の特徴や利点をコンセプトに取り入れる
- 顧客が重視する製品の差別化ポイント(使用感、持続性、香りなど)を強化
なお、コンセプトを調整すると、刺さるターゲットも変わります。
そのため、コンセプトとターゲット、どちらかを固定して考えていくのが良いでしょう。
これらのアプローチにより、インタビューから得られた情報を製品コンセプトに効果的に反映させることができます。顧客の実際の声を製品開発に活かすことで、市場での成功率を高めることが可能になります。
まとめ:ゼロから化粧品設計をしよう!
本ガイドでは、化粧品OEM開発の初歩から、市場ニーズの調査、仮コンセプトの設定、そしてコンセプトを磨くところまでのプロセスを詳しく解説しました。市場ニーズの調査から始まり、これに基づいて製品の方向性を考え、具体的なターゲット顧客を定めることが、成功への第一歩です。
製品開発は単にアイデアを形にするだけではなく、消費者の声を製品に反映させるプロセスです。このガイドが、化粧品OEM開発をこれから始める方々にとって有益なスタートポイントとなり、自身のブランドを市場に打ち出すための確固たる基盤を築く助けになれば幸いです。
引き続き、化粧品開発・販売を行うみなさまのお役に立つ情報を発信していきます!