化粧品には、
- ◯伝わる成分
- ☓伝わらない成分
「お客さんはどこまで成分のことを知っているの」
「美容感度が高い人には伝わるんじゃないの?」
「自社ではこの成分をイチオシしてるけど、もしかして伝わらない?」
この記事では、そんな方々に向けて、次のことを解説します。
- どの成分が消費者に伝わりやすく
- どの成分が伝わりにくいのか
- 「伝わらない成分」を「伝える」コツ4つ
を解説します。
化粧品開発・販売に携わる方はぜひチェックして下さい。
さきりこ
大手メーカー化粧品研究員
開発した商品でベスコス受賞経験のある化粧品のプロ
成分にもとづいた「賢いキレイ」を届けるため、本サイト「myロットコスメ」で情報発信中!
美容のキホン、おすすめ化粧品の紹介をしています。
伝わる・伝わらない成分を知らないと失敗する
お客さんは、化粧品を選ぶ際、広告やパッケージに書かれている成分をチェックしたり、詳しい人では全成分(パッケージ裏に記載された成分の一覧)を見たりして買うかどうか判断します。
しかし、その中には「伝わる成分」と「伝わらない」があります。すべての成分が平等に理解されているわけではありません。
伝わらない成分を、そのまま伝えたり、説明不足の状態で伝えたりすると、「よくわからないからやめておこう」と敬遠され、選んでもらえません。
化粧品販売をする際は、成分の認知度を理解し、それに基づいたクリエイティブを行うことで、製品を届けたい人に届けることができます。
伝わる成分を前面に出すことで、製品の訴求力を高めることができる一方、伝わりにくい成分については、その効果をわかりやすく丁寧に説明することが求められます。
お客さんが製品を手に取る際に、成分表を見て「この成分が肌に良い理由」を理解し、安心して使用できるようにすることが、成功に繋がります。
一般消費者に伝わる成分
化粧品市場における一般消費者とは、
- 美容初心者
- 美容が好きだけどそこまで詳しくない人
このような人たちは、知識レベルがそこまで高くないのですが、市場において最も大きなボリュームを占めています。
そのため、化粧品の成分について知識がない消費者にも丁寧でわかりやすい解説を提供することが、ビジネス成功の鍵となります。
一般消費者に伝わる成分の例を挙げます。
- ヒアルロン酸
- コラーゲン
- グリセリン
- セラミド
- ビタミン類(ビタミンC、ビタミンEなど)
- レチノール
ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリン、セラミドなどの保湿成分は一般消費者にもっとも伝わりやすい成分です。
特に最近は「スキンケアはとにかく保湿が重要」という考えが浸透しているため、これらのわかりやすい成分が広く知られています。
また、ビタミンCやEなどは栄養の分野でも身体に良いとして知られ、肌にも良いイメージがあります。
ビタミンCは中でも有名で、美白、エイジングケアなどどのような効果があるか、についてもセットで理解されていることがあります。
さらに、レチノールは最近の流行成分のため知名度が非常に高まっています。
一般消費者であっても、何気なく目にした美容記事や化粧品広告などで知っている人が多いです。
中には、「刺激が強め」と認識している人もいるので、丁寧なコミュニケーションが必要です。
美容通になら伝わる成分
美容通=美容に詳しい消費者は、より多くの化粧品成分を知っています。
さらに、成分の効果や使用方法にも深い関心があり、成分の名前と効果をセットで認識しています。
このような美容通には、より多くの成分が伝わりますが、特に伝わりやすい成分について列挙します。
- ナイアシンアミド
- プラセンタ
- トラネキサム酸
- CBD(カンナビジオール)
- CICA(シカ)
- グリチルリチン酸2K
- ヒト幹細胞培養液
- エクソソーム
- リポソーム
- 成長因子EGF
- バクチオール
- アゼライン酸
美容に詳しい消費者に伝わる成分は、次のような特徴があります。
- 特定の肌悩みに特化
- 最近の研究により製品化された成分
- 高価で高い効果がある
製品のターゲットがある程度美容感度が高い人である場合、これらの成分をそのまま広告などに記載しても問題ないでしょう。
美容通は、単に製品が良いというだけでなく、「どのようにしてその効果が得られるのか」を知りたがっています。
そのため、製品のパッケージやプロモーションで、これらの詳しい効果、メカニズム、科学的根拠などをはっきり伝えることが重要です。
伝わらない成分
科学的には効果が確認されている一方、消費者への認知度が低くあまり知られていない「伝わらない」成分が数多く存在します。
むしろ、伝わる成分がほんの一部で、ほとんどは伝わらない成分と言えます。
例を挙げるときりがないですが、例えば次のような成分があります。
- フェルラ酸
- フラーレン
- スフィンゴシン
- アラントイン
- ビサボロール
- レスベラトロール
- アルブチン
- ティーツリーオイル
- カツミレエキス
- マデカッソシド
- マグノリアエキス
- メドウフォーム油
- パンテノール
- ビオチン
- 植物エキス系(〇〇果実エキスなど)
伝わらない成分には次の特徴があります。
- 科学的で難しい名前
- メカニズムや効果の特徴が薄い
- 美容雑誌などで取り上げられていない
これらの成分は、パッケージや広告にそのまま記載しただけではほとんど意味がないか、「よくわからない」と判断され製品自体がスルーされてしまうおそれすらあります。
ただ、これらの成分には高い効果があり、訴求することでより魅力的になる場合があります。
そのため、次のことを意識して、積極的に盛り込んでいくことをおすすめします。
「伝わらない成分」を「伝わる成分」にするコツ4選
では、伝わらない成分を魅力的に表現して、消費者に購入してもらうためにはどのようにすればよいのでしょうか?
そのコツを紹介します。
- コツ1:「うるおいキープ成分」など新しくネーミングする
- コツ2:エビデンスをしっかり提示する
- コツ3:ビジュアルで伝える
- コツ4:ストーリーや起源でイメージさせる
コツ1:「うるおいキープ成分」など新しくネーミングする
成分の効果をもとに、新ネーミングすることで伝わりやすくなります。例えば、カタカナの保湿成分は、まとめて「うるおいキープ成分」「モイスチャーロック」などの名前にすることで、その効果を直接伝えることができます。
この時、親しみやすい言葉を選ぶのが重要です。保湿成分であれば、誰もが知っているわかりやすい言葉に置き換えましょう。認知度が低い言葉や、難しい言葉はNGです。
- うるおい
- 水
- 水分
- ウォーター
- ぷるぷる
- ドロップ
- モイスチャー
- アクア
- ハイドロ(認知度が低い)
- グロー(認知度が低い)
- 霧の吐息(なんのことかわからない)
- ウォーターコンテント(なんのことかわからない)
- 水分トランスピレーション(なんのことかわからない)
なお、成分の新ネーミングにあたっては、薬機法上、「成分特記表記」の併記が必要ですのでご注意下さい。
コツ2:エビデンスをしっかり提示する
まだ知られていない新しめの成分は、エビデンス=科学的根拠を提示することが有効です。
メーカー資料などの実験データから、肌にどのような効果があるか明確に示せると訴求力が上がります。ただし、薬機法の観点から臨床データをそのまま使用することはNGとされています。
また、ビフォーアフターで事例を示すのも非常に効果的です。実際にその成分を使用した肌の変化を示す写真や体験談は、とても強力なコンテンツになります。ただし、薬機法の観点からビフォーアフター表現についての制限がありますのでご注意下さい。
コツ3:ビジュアルで伝える
ビジュアルで訴えることで、効果を直感的に伝える事ができます。ビジュアルの例としては次のようなものがあります。
- ビフォアフター
- メカニズムをイラスト化したもの
- 成分のイメージ画像
たとえば、しわ改善成分を含むクリームの場合、使用前と数週間後の肌の写真を並べることで、その成分が肌にどのような変化をもたらしたかを消費者に直感的に理解させることができます。また、肌への効果メカニズムをイラストやアニメーションで視覚的に表現することも有効です。
コツ4:ストーリーや起源でイメージさせる
成分そのものの効果だけでなく、成分がどのように発見され、どのような研究が行われたかというストーリーや歴史を伝えるのも有効です。
例えば、CICA(シカ)成分。CICAはツボクサという野草から抽出される成分です。野生のトラが傷を癒やすため、ツボクサが生える場所で転がっていたという伝説があります。CICAには、肌荒れ防止、肌を整える効果があります。
このように、成分が発見されたストーリーなどと関連付けて紹介することで、初見の成分でも伝わりやすくなります。
広告表現の成功例と失敗例
実際のブランドからの事例を交えて、どのように成分表記が成功または失敗に繋がったか、そして成分知識と消費者エンゲージメントの関係について掘り下げます。
成功事例
一例として、ある自然派スキンケアブランドが、全成分を製品パッケージに明記することで知られています。このブランドは特に、「無添加」や「オーガニック」といったキーワードを前面に押し出し、成分の源を詳しく説明しています。消費者はこの透明性を高く評価し、製品への信頼感が増大しました。例えば、製品に含まれる「アルガンオイル」は、その抽出方法や原産地情報も同時に提供され、消費者に安心感を与えています。このアプローチにより、ブランドのリピーター率が高まり、口コミでの評判も向上しました。
失敗事例
一方で、ある化粧品ブランドが科学的に効果が証明されていない成分を過大に宣伝したケースがあります。このブランドは「セル再生を促進する」と謳いながら、具体的な科学的根拠を示さずに製品を販売しました。消費者からは、成分の説明が曖昧で信頼できないとのフィードバックが多数寄せられ、最終的には販売数が大きく減少しました。さらに、規制当局からの指摘を受ける事態にもなり、ブランドイメージにも悪影響を及ぼしました。
これらの事例から明らかなように、成分表記は売上に大きな影響を与えます。
消費者は製品を選ぶ際、効果や安全性についての情報を求めています。成分がはっきりと伝わる形で記載され、さらにエビデンスに基づいている場合、ブランドとの信頼感構築に繋がります。
逆に、不明瞭な成分表記や誤解を招く情報は、消費者の不信感を招き、ブランドの信頼性を損なってしまいます。成分表記の正確さと透明性を保つことが重要です。
まとめ:消費者に伝わる製品・広告にしよう
化粧品業界において、消費者に製品の特徴や成分を正確に伝えることは、製品の売上に直結します。この記事では、化粧品の成分が消費者にどれだけ理解されているかを考えながら、効果的な製品開発と広告戦略を構築するための要点をまとめました。
「伝わらない成分」を「伝わる成分」にするコツは次の通り。
- コツ1:「うるおいキープ成分」など新しくネーミングする
- コツ2:エビデンスをしっかり提示する
- コツ3:ビジュアルで伝える
- コツ4:ストーリーや起源でイメージさせる
化粧品を開発・販売する際には、これらの点を踏まえて、消費者に伝わる製品と広告を心がけることをおすすめします。
化粧品の広告表現に迷われた際は、お気軽にご相談下さい。
引き続き、化粧品開発・販売を行うみなさまのお役に立つ情報を発信していきます!