これから化粧品OEM開発をされる方にとって、
「医薬部外品にすべき?一般化粧品にすべき?」
というのは悩むポイントの一つです。
医薬部外品は、より強い訴求ができるため販売効果も高くなることが期待できます。
しかし、製品のジャンルによっては医薬部外品ならではの訴求が生きて来ない場合があり、一般化粧品との差別化が弱くなるケースがあります。
この記事では、どのような場合に医薬部外品が有利になるのか?について、広告訴求の面から解説します。
- 「そもそも医薬部外品は、一般化粧品の上位互換なの?」
- 「自分が作ろうとしている化粧品はどっちを選んだ方がコスパがいい?」
- 「医薬部外品ならではの広告が知りたい」
さきりこ
大手メーカー化粧品研究員
開発した商品でベスコス受賞経験のある化粧品のプロ
成分にもとづいた「賢いキレイ」を届けるため、本サイト「myロットコスメ」で情報発信中!
美容のキホン、おすすめ化粧品の紹介をしています。
医薬部外品で言えることは?
医薬部外品は一般化粧品よりも効能効果を具体的に訴求できるため、上位互換と考えることができます。ここでは、医薬部外品が上位互換と言える理由や具体例を解説します。
薬用化粧品なら一般化粧品の内容は全部言える
一般化粧品で訴求できる効能効果については、全て医薬部外品でも訴求OKです。
ただし、医薬部外品のなかでも「薬用化粧品」の場合に限ります。
薬用化粧品とは、医薬部外品のなかで化粧品としての使用目的も有するもののことです。
化粧水、乳液、クリーム、美容液、固形石鹸などが含まれます。
(育毛剤、除毛剤、腋臭防止剤は医薬部外品ですが、薬用化粧品には含まれません。)
一般化粧品の効能効果+特定の効能効果
特定の効能効果
例えば、薬用化粧品では一般化粧品で認められている次のような訴求が可能です。
- 保湿、うるおいを与える
- 肌を整える
- 肌のキメを整える
- 肌をすこやかに保つ
- 肌の柔軟性を保つ
- 肌を保護する
- 肌にハリを与える
- 肌にツヤを与える
- 肌をなめらかにする
- (汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする
- 頭皮、毛髪にうるおいを与える
- 毛髪にはり、こしを与える
- 頭皮、毛髪をすこやかに保つ
- 毛髪をしなやかにする
さらに、上記に加えて医薬部外品ならではの訴求が可能です。
- 美白
- ニキビを防ぐ
- 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ)
- 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ
- あせも・しもやけ・ひび・あかぎれを防ぐ
- かみそりまけを防ぐ
- 皮膚の清浄・殺菌・消毒
- 体臭・汗臭を防ぐ
- 育毛
- 除毛
- わきが
- 制汗
- 薬用
一般化粧品と同じ訴求のみはNG
意外かもしれませんが、「医薬部外品なのに、一般化粧品の範囲内でしか訴求していない」はNGとされています。
化粧品の効能の範囲のみを標ぼうするものは、医薬部外品としては認められない。
日本化粧品工業連合会 化粧品等の適正広告ガイドライン
つまり、医薬部外品である以上、承認された効果をしっかりと訴求する必要があります。
例えば、「ニキビを防ぐ」という効能効果が承認された医薬部外品について、一般化粧品に認められる「皮膚を清浄にする」などを訴求するのではなく、「ニキビを防ぐ」という訴求を行うことになります。
医薬部外品特有の効果をあえて訴求しない、ということはなかなか起こらないのであまり問題になりませんが、効果のあるものはしっかり訴求しよう、という内容がガイドラインに書かれていることは知っておいても良いでしょう。
一般化粧品or医薬部外品どっちを選べばいい?
OEMを利用してこれから化粧品開発される方にとって、
「医薬部外品にしたほうが売れる?」
「一般化粧品でもいい?」
というのが頭に浮かぶ疑問の一つです。
たしかに医薬部外品はより強い訴求ができ、販売効果が高くなることが期待できます。
しかし、製品ジャンルや目的によっては、「医薬部外品にしてもあまり旨味がない」場合があります。
化粧品をこれから開発するにあたって、大きな方針の一つになるのでしっかり確認しておきましょう。
医薬部外品を選ぶのが効果的な場合と、一般化粧品でも良い場合を次の図で解説します。
医薬部外品を選ぶのが効果的な場合
次の製品ジャンルは医薬部外品ならではの強い訴求ができるため、医薬部外品を選ぶのが効果的です。
- 美白・シミ・くすみ
- 日焼け止め
- ニキビ
- 毛穴ケア
- 殺菌・消毒
- 体臭・わきが・汗臭ケア
- あせも・しもやけ・ひび割れ・あかぎれケア
- 頭皮・髪の臭いケア
- 育毛
- 除毛
- 敏感肌ケア
例えば、
- 一般化粧品:肌にツヤを与えます
- 医薬部外品:美白、メラニンの生成を抑えシミ・そばかすを防ぐ
- 一般化粧品:肌を清浄に保ちます、肌荒れを防ぎます
- 医薬部外品:ニキビを防ぎます
一般化粧品で「美白」「ニキビ」などを広告に記載すると一発NGなのですが、医薬部外品はよりダイレクトな訴求ができます。
また、医薬部外品の中の化粧水、乳液、美容液など特定の化粧品は「薬用化粧品」に分類され、「薬用」の文言が使えます。
消費者により強く効果を訴える事ができます。
そのため、上記の一覧にあるジャンルの化粧品を開発しようと考えているのであれば、訴求の面では医薬部外品にすることをおすすめします。
一般化粧品でも良い例
一方、次の製品ジャンルは医薬部外品ならではの強い訴求ができません。そのため、コスパを考えると一般化粧品を選ぶのがベターです。
- 保湿・乾燥・かさつきケア
- エイジングケア
- テカリ・皮脂ケア
- クマケア
- 赤みケア
- 毛穴の開き・黒ずみケア
- 乾燥小じわ
- 肌の栄養補給
- (育毛・除毛以外の一般的な)頭皮ケア
- (育毛・除毛以外の一般的な)ヘアケア
- リップケア
- ハンドケア
- フットケア
- マッサージ
- まつげ美容液
- メイクアップ品全般
上記は、医薬部外品ならではの強い訴求があまり生きてこない製品ジャンルです。
なぜなら、医薬部外品のみに許された効能効果に、上記の悩みや機能は入っていないためです。
例えば、エイジングケアについて、医薬部外品だからといって次のような訴求はNGです。
- 細胞がよみがえる
- 肌が若返る
- シワが消える
- シミが消える
医薬部外品は一般化粧品に比べて開発コストがかかる場合があります。
上記の製品ジャンルはそのコストをかけても、特に強い訴求ができるわけではありません。
そのため、一般化粧品にした方がコスパが良いと言えます。
医薬部外品ならではの訴求ができる場合は、医薬部外品を、そうでない場合は一般化粧品を選ぶのが良いでしょう。
医薬部外品なら強力な効果を訴求していいの?
医薬部外品は、一般化粧品よりも強力な効果を訴求できるという利点があります。これは、医薬部外品が特定の効能効果を持つ成分を含むためです。ただし、いくつかの注意点もあります。具体的にどのような点に注意すべきか、次に詳しく説明します。
一般化粧品より強い訴求ができる
医薬部外品は厚生労働省に認められた有効成分が含まれているため、一般化粧品よりも強い訴求ができます。
「ニキビ」「美白」などはわかりやすい例です。
一般化粧品ではこれらの効果が訴求できないばかりか、広告のどこかにワードを書くだけでNGとされてしまいます。
最近では、消費者がより効果の高い、即効性のある商品を求める傾向が強くなっています。
特にスキンケアやヘアケアにおいて、具体的な効果を実感できる商品が人気です。
そのため、よりダイレクトな表現が好まれるようになっています。
医薬部外品は、一般化粧品ではNGとされる、よりダイレクトな表現が可能になるのが大きなメリットです。
訴求できるのは承認を受けた効能効果のみ
ただし、医薬部外品だからといって、何でもかんでも自由に訴求できるわけではありません。例えば、一般化粧品の「肌を整える」を、医薬部外品で「肌を細胞から整える」と勝手に強い訴求にすることはできません。
医薬部外品特有で言えるのは、厚生労働省から承認を受けた効能効果のみであり、範囲にもルールがあります。
主なものは先程解説した下記のとおりです。
- 美白
- ニキビを防ぐ
- 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ)
- 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ
- あせも・しもやけ・ひび・あかぎれを防ぐ
- かみそりまけを防ぐ
- 皮膚の清浄・殺菌・消毒
- 体臭・汗臭を防ぐ
- 育毛
- 除毛
- わきが
- 制汗
- 薬用
医薬部外品特有の訴求は、この範囲の中で行なっていくことになります。
有効成分が入ってなければ訴求NG
どんな商品でも、医薬部外品であれば先程の表の訴求を全て行って良い、というわけではありません。
- 成分aを含む医薬部外品=訴求A :OK
- 成分aを含む医薬部外品=訴求B :NG
例えば、紫外線吸収剤を含む医薬部外品があったとする。
「メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ」
はOKですが、
「皮膚の清浄・殺菌・消毒もできる」
と訴求するのはNGです。
なぜなら、この商品は成分aの効果として「メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ」が承認されているのみであって、「皮膚の清浄・殺菌・消毒もできる」という効能効果については承認を受けた成分が配合されていないためです。
つまり、医薬部外品特有の訴求は、有効成分:訴求が対になっているのです。
一覧表に記載されているからと言って、自分の開発品に含まれていない有効成分の訴求はできないのです。
しばり表現に注意
承認された効果の範囲内で訴求する場合でも、「しばり表現」に注意する必要があります。
決められた表現をそのまま記載すること。言い換えはもちろん、省略もNG
医薬部外品でしばり表現をすべきなのが、次の表現です。
「メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ」
このまま訴求してももちろん良いですが、「美白(※)メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ」と注釈を入れる形でもOKです。
次のような訴求をする場合は、しばり表現が必要です。
- 美白・ホワイトニング
- シミ、そばかすケア
これらの訴求を行う場合、次のような言い換えや省略はNGです。
- メラニンが作られるのを抑え
- メラニンを根本から抑制し
- できてしまったシミ・くすみも
- メラニンの生成を抑える
- シミ、そばかすを防ぐ
医薬部外品でも訴求NGなのは?
いくら医薬部外品でも訴求ができない表現もあります。
- 医薬品のような効能効果
- 実証されていない効能効果の表現
- 誇大広告や消費者を誤解させる表現
その例を具体的に見ていきましょう。
医薬品のような効能効果はNG
医薬部外品であっても、医薬品のような強い効果を訴求することはできません。具体的には、以下のような表現が禁止されています。
- この製品で病気が治る
- アトピーが治る・改善する
- 〇〇を完全に治す
- 〇〇の症状を改善
- 肌の真皮から美しく
- 細胞にはたらきかける
- ニキビ跡に効く
これらの表現は医薬品に該当し、医薬部外品では使用できません。医薬部外品は特定の効能効果を持つ成分が含まれていますが、それでも医薬品のような治療効果を謳うことは許されていません。
効能効果以外は化粧品と同じルール
医薬部外品であっても、効能効果以外の部分では一般化粧品と同じ広告規制が適用されます。具体的には、以下のような誇大表現や消費者を誤解させる表現が禁止されています。
- デラックス処方
- 最大の効果
- 効果保証
- 特許取得成分
- この成分で効果100%保証
- 唯一の特許取得成分
- 即効性があり、全ての症状に対応
これらの表現は、実際の効果を過剰に強調しているため、消費者に対して誤解を与える可能性があるとして禁止されています。
まとめ:医薬部外品にするなら、ならではの訴求があることを確認
化粧品OEM開発において、医薬部外品と一般化粧品のどちらを選ぶかは非常に重要な決定です。医薬部外品は特定の効能効果を具体的に訴求できるため、より強力な広告が可能となり、消費者の期待に応えやすくなります。しかし、製品のジャンルや目的によっては、医薬部外品の訴求が活かせない場合もあります。
- 医薬部外品のなかに、薬用化粧品とそれ以外が含まれる
- 薬用化粧品では一般化粧品の効能効果+特定の効能効果が訴求できる
- 薬用化粧品以外の医薬部外品では特定の効能効果のみが訴求できる
- 美白、ニキビなどの製品ジャンルは医薬部外品が良い
- 保湿、エイジングケアなどの製品ジャンルは一般化粧品で十分
引き続き、化粧品開発・販売を行うみなさまのお役に立つ情報を発信していきます!